目次
序章 生きている価値
第一章 鬼畜の所業―北九州連続監禁殺人事件
第二章 「消された家族」
第三章 やっとなんとか人間になれた
第四章 冷遇される子供たち
第五章 消えない記憶と、これからの人生
終章 俺は逃げない
書評
著者の張江泰之さんは、この“人殺しの息子”ではない。
張江泰之さんは、フジテレビのチーフプロデューサーを務めており、『追跡!平成オンナの大事件』という番組を作った。
その番組の放送後、視聴者から抗議の電話をもらうのだが、それがその番組の登場人物の関係者で、息子だった。
その息子というのは、『北九州連続監禁殺害事件』の主犯の死刑囚とその妻(受刑者)との間にできた二人の子供のうちの長男。
彼からの抗議の電話をきっかけに、独占インタビュー、『ザ・ノンフィクション 人殺しの息子と呼ばれて』の番組制作・放送、本の出版にまで至った。
共同制作のような感じかなと、息子さんは名前を明かせないからインタビューという形でこの本が出た。
実は私は『北九州連続監禁殺害事件』はここ2,3年でネットでたまたま見つけて知った。
だけど、犯人が捕まったのは、2002年のことで、当時は14,5歳だったから知らないこともない年齢だと思うんだけど、こんな凄惨な事件について何一つ知らなかった。
ま、そもそもそういう事件を知ってなんになるのかよく解ってない。
職場で話題が上がって、「怖いねぇ。」「殺された人達は可哀想だねぇ。」と言われれば、「そうですね。」としか言えない。
だって怖かったのはそこにいた人達だし、殺された人達はもう生き返らないんだし、意味のないコメントだなぁってつくづく思う。
で、先日、書店でこの本を見つけて、事件については2,3年前にざっと知っていたし、毒親問題を抱えている私は、彼は人殺しの親を持ちながら、この社会をどう生き抜いてきたのだろう、何かヒントになるかな、気付きはあるかな、という気持ちでこの本を読んでみようと思った。
色んな読み方があるだろうけど、これはただのお涙ちょうだい系でも、苦労に共感してほしいだけの本でもないと思う。
本の前半はだいたい彼が今までどう生きてきたことが書かれていた。
それを“苦労話”ととる人はいるかもしれない。
彼は聞かれたことについて、真実を話しているだけだと私は思うけど。
最後まで読むと、いかに彼が成長しすぎているかが分かる。
確かに苦労を共感してほしいと思うことはあるし、それは誰にでもあると思う。
でも彼の場合はその時期をもう終えてる感じがする。
人の苦労に共感できる余裕がある感じがする。
それでも私は同情するなぁ。子供らしい子供時代を過ごせなかったという点は私も同じだから。
問題のある親を持つと、親子の役割が逆転して、子供は変に大人になっちゃうんだよね。
良く言えば“しっかりしてる子”になるんだろうけど。
私は今32歳で、彼は25歳になるのかな?
毒親問題で最近取得できたものを彼はもう既に取得しているし、私がまだ取得できていないものも、彼は取得できている。
これってやっぱり苦労の差なんだろか。
別に自分は自分のペースで成長していけばいいと思うけど、私より7つも下なのに、本の後半での彼の発言がもう90歳の人が言うような内容なんだよね。
一方で、“2チャンネル”とかでの彼への誹謗中傷・なりすまし(こういう輩は国民の1割程らしい)に対して、真に受けて反撃するところは若さかな。
まぁこれは実際に叩かれてみないと分かんないか。
本のタイトルは物騒だけど、良い本だと思います。
そういう境遇でもここまで頑張ってこれるんだ。
または、同じ境遇で悩んでいる人なら心の中で共感できるし、きっと貴方の悩みも“彼なら共感してくれる”、そんな気持ちになれるんじゃないかなと思います。
タイトルは本当物騒なんだけど、私は心が軽くなったというか、なんとも言えない楽な気持ちになっているのが不思議です。
彼の言葉に心打たれたんでしょうね。
今度は彼自身が書いた本を読んでみたいな。
おすすめしたい人
- 毒親持ち・育ちの人
- 自分の人生が上手くいかないのは環境のせいだと思っている人
著者プロフィール・張江泰之
フジテレビ情報制作局情報企画開発センター専任局次長。
1967年、北海道生まれ。90年、NHK入局。報道番組のディレクターとして、『クローズアップ現代』や『NHKスペシャル』を担当。2004年に放送した『NHKスペシャル「調査報告 日本道路公団~借金30兆円・膨張の軌跡~」』文化庁芸術祭優秀賞受賞など受賞多数。05年、NHKを退局し、フジテレビ入社。『とくダネ!』やゴールデン帯の大型特番を担当し、現在は、『ザ・ノンフィクション』のチーフプロデューサー。17年に放送された「人殺しの息子と呼ばれて」では加害者の長男を10時間にわたってインタビューし、キーマンとして関わった。
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